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  [US] POV(point-of-view)カメラ特許に対し、Aliceテストを施して特許適格性の判断を行った合衆国控訴裁判所

POVpoint-of-view)カメラ特許に対し、Aliceテストを施して特許適格性の判断を行った合衆国控訴裁判所

 

本事件において、控訴裁判所は高・低解像度ビデオを並列で記録し、リモート装置に低解像度ビデオをリアルタイムで伝送する無線技術を備えることを特徴とする、POVビデオカメラに関する請求項に対し、特許法第101条および関連の判例に基づき、特許適格性の判断を行った。

 

1.事件の背景

控訴人(原告)であるContour IP Holding LLC(以下「Contour」)は、被控訴人(被告)であるGopro, Inc.(以下「GoPro」)のPOVpoint-of-view)デジタルビデオカメラが自社の特許を侵害したとして訴えを提起し、GoProはそれから約5年が経った後、Contourの侵害主張特許が米国特許法第101条に基づき、特許を受けることができないと主張し、略式判決(summary judgment)を求めた。本案の訴訟はGoproの請求した略式判決を認めたカルフォルニア北部地方裁判所の判決に不服し、Contourが連邦巡回区控訴裁判所に提起した控訴審である。

 

2.侵害主張特許

Contourは、米国特許第8,890,954号と、第8,896,694号(まとめて「侵害主張特許」と称する)の特許権者であり、‘694特許は、‘954特許の継続出願件である。侵害主張特許は、ポータブルPOVビデオカメラに関し、そのカメラは、第三者の観点ではなく、ユーザの観点からシーンをキャプチャするのに使用され、スポーツ活動中にユーザがカメラを簡単に見つけられない位置によく取り付けられる。例えば、スキーヤがヘルメットに小型のPOVカメラを取り付けることができ、この場合、ユーザはカメラからリアルタイムで録画される内容をチェックすることができず、カメラそのものを見ることもできない。このような状況下では、ユーザの希望する録画設定やカメラの角度を調整することが難しいという問題点がある。

侵害主張特許は、このような問題を解決すべく、カメラがスマホのようなリモート装置でリアルタイムで情報を伝送することができる無線技術をビデオカメラに実現する方法を提示している。ユーザは、このリモート装置を介してカメラが録画している内容を見ることができ、活動の開始前または途中に照度およびオーディオ調節のような録画設定をその都度調整することもできる。例えば、スキーヤは、スマホで自分のスキースロープを滑り落ちる場面が希望のとおりに撮れているか確認することができる。

無線技術を使用するのとは別に、カメラシステムの改善点も含めている。この特許の一実施例において、カメラが高解像度と低解像度の2通りのフォーマットでビデオを録画し、低解像度ファイルをリモート装置でストリーミングするように構成されると開示している。これにより、カメラシステムは、無線接続帯域幅を超過せずに、リモート装置からリアルタイムで再生することができるようにする。例えば、スキーヤは、低解像度ビデオを用いて、リモート装置からリアルタイムで状況をモニタリングし、それに応じた設定の調整を行う。高解像度の録画バージョンは、以後チェックすることができるようにカメラに保存される。

 

3.原審判決

2018年、カルフォルニア北部地方裁判所は、請求範囲解釈(claim construction)に関する判決を行った。特に、‘954特許の独立クレームの請求項11を次のように解釈している:「ビデオイメージデータから、第1のイメージデータストリームと第2のイメージデータストリームとを生成し、第2のイメージデータストリームは、第1のイメージデータストリームよりさらに高画質である。」裁判所はまた、「生成(generating)」という単語を「ビデオイメージデータから並列(in parallel)で記録」すると解釈している。Contourは、並列でストリームを生成することは、高解像度ストリームを先に生成した後、ダウンコンバージョンして低解像度ストリームを「順次に(in sequence)」生成する従来の技術と差別化できると主張していた。

2021年、GoProYu v. Apple Inc., 1 F.4th 1040 (Fed. Cir. 2021)事件を引用し、係争特許に対して米国特許法第101条に基づく特許適格性の問題を提起していた。Yu事件の特許は、本案事件と同様、デジタルカメラの構成要素を説明しているが、裁判所はこの特許が(露出の異なる)2枚の写真を撮り、一方の写真を用いて他方の写真の品質を如何なる形であれ向上させる抽象的なアイデアに焦点を合わせている(つまり、特許性の欠如)と結論づけた。

1審地方裁判所は、Alice Corporation Pty. Ltd. v. CLS Bank International, 573 U.S. 208 (2014)事件で定立された特許適格性の判断のための2ステップ分析(以下、「Aliceテスト」)を参照し、Aliceのステップ1において、請求項11は、「2つの異なる解像度でビデオを生成、伝送し、リモートでビデオの設定を調整する」抽象的なアイデアに焦点を合わせていると判断した。ステップ2においては、この請求項が「物理的な構成要素が基本的かつ一般的な作業の他に、別の方式で作動するとみなすことができない」専ら機能的であり、結果志向的な言語のみで説明しているため、特許適格性がないと結論づけた。そこで、Contourが控訴をした。

 

4.控訴審判決

イ.関連法令および判例

米国特許法第101条は、「誰でも新規かつ有用な方法,機械、製造物若しくは組成物又はそれについての新規かつ有用な改良を発明又は発見した者は、本法の定める条件及び要件に従って,それについての特許を取得することができる」と明示している。Alice事件において、最高裁判所はそれに対する例外事項として、「自然の法則、自然現象、抽象的なアイデアは特許を受けることができない」と判示している。本案事件で問題になった抽象的なアイデアに対する特許適格性の例外事項は、「アイデアそのものは特許を受けることができないという昔からの原則」に基づいたものである。

特許適格性を判断すべく、最高裁判所では「Aliceテスト」として知られる2ステップテストを考案した。Aliceテストのステップ1では、請求項が抽象的なアイデアに焦点を合わせているか(「directed to」)を検討する。もし、請求項が抽象的なアイデアを対象としていない場合、ステップ1は終了となり、もし請求項が特許を受けることができないテーマを対象としている場合、ステップ2に進み、請求項が説明された例外事項そのものよりかなり多くの(「significantly more」)ものに該当するか否かを評価する。裁判所は、請求項が、特許を受けられるものに切り替えるのに十分な要素(elements)を含んでいるかを決定する。

ロ.分析および判決

地方裁判所は、いくつかの判例を引用し、Aliceテストのステップ1において、‘954特許の請求項11が特許を受けられるテーマを対象としていると結論づけたが、控訴裁判所はそれに同意しなかった。

Aliceテストのステップ1において、請求項が特許を受けられないテーマに焦点を合わせているかを判断するために、裁判所では、よく「従来技術に比べて改善事項の中核内容」を検討し、そのために、請求項が単に抽象的なアイデアそのものの結果や効果を対象とするよりは、関連技術を改善する特定手段や方法に焦点を合わせているか否かを分析する。

控訴裁判所は、請求項11が関連技術を改善する特定手段を対象とすると見なしていた。すなわち、この請求項は、低画質および高画質データストリームを並列で記録するようにプロセッサを構成した後、低画質データストリームをリモート装置で無線伝送する限定事項と条件を組み合わせることで改善された、POVカメラについて説明する。このカメラを使用すると、ユーザは無線データ伝送に対する帯域幅の制限を克服し、希望する録画物をリモートかつリアルタイムでチェックして調整することができる。よって、請求項は、データストリーム録画とリモート装置で無線伝送される低画質録画を並行する特定の技術手段を必要とし、それは遠隔からカメラの録画内容をリアルタイムで視聴する改善された機能を提供する。

よって、請求項がそのもので抽象的なアイデアである結果や効果を対象としているとする地方裁判所の結論は、技術的結果を見出すために、明細書に開示された技術的手段を無視していると見なしていた。係争請求項が発明当時、先行技術として存在し、公知となっている従来の構成要素を単に採用したものであるとするGoProの主張に対しては、たとえそうだとしても、ステップ1でその事実だけで請求項そのものが抽象的なアイデアを対象とすると結論づけることはできないと判断した。

控訴裁判所は、請求項11が具体的な技術的環境で、無線データを伝送すること、それ以上を描写していると見なした。その請求項は、複数のビデオストリームを並列で録画し、低画質ストリームのみをリモート装置に無線伝送することで、請求しているPOVカメラが別の方式と異なる方式で作動できるようにしているため、技術的問題に対し、技術上の解決方法を提示していると判断したのである。よって、この請求項は、Aliceテストのステップ1で特許適格性が認められるとの結論を下した。

 

5.結論

第1審裁判所は、特許適格性を分析すべく、Alice/Mayoテストのステップ1およびステップ2を適用して分析を行い、ステップ1において、請求項11を「2つの異なる解像度でビデオを生成、伝送し、リモートでビデオの設定を調整する」抽象的なアイデアに焦点を合わせているとみなし、続いてステップ2においては、この請求項が「物理的な構成要素が基本的かつ一般的な作業の他に、別の方式で作動するとみなすことができない」専ら機能的であり、結果志向的な言語のみで説明しているため、特許適格性がないと結論づけた。しかし、第2審控訴裁判所は、Alice/Mayoテストのステップ1を分析し直したことで、請求項11の技術的問題に対し、技術的な解決方法を提示しているため、特許適格性があると結論づけた(よって、特許適格性の結論によって、ステップ2の分析は行っていない)。

 

出処http://kpaanews.or.kr/news/

 


 
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